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■オープニング

まどかが、……死んだ……。

まどかが、目を瞑ってから……僕はずっと……。

まどかが、目を覚ますのを待ちながら……、泣き喚いていた。

気がつけば、朝になっていて……。

いつの間にか……僕の背中へ、麗姉さんが覆い被さっていた。

真田も……僕の部屋を出たり入ったり、していたようだけど……。

僕の胸中は、まどかのことだけ。……他には、何も考えられない。

さっきまでの、まどか……。

笑顔の、まどか……。

ちょっとムクれている、まどか……。

僕を『お兄ちゃん』って呼ぶ、まどかの……様々な顔を思い浮かべていた。

そして、眼前で目を瞑っているまどかと見比べては……。涙を流し続けるしか、なかった。

すべての事情を知る者達だけで、しめやかな通夜を行った。

お爺ちゃん、真田、麗姉さん、……僕。そして、常勤の召使い達。

信頼おける魅神楽グループの側近達……。その他には……秀一さん、亜由美さん、仙治朗さん……。

昔から、魅神楽財閥に深い関わり持つ霊法師様に、伝統の習わしに法った葬儀を行って貰った。

翌日も……同じ面々で行う、しめやかな御葬式。

お通夜から御葬式の間、僕は……。

可愛い可愛いまどかを想いながら、ずっと泣き続けていた。

―――そして、まどかの死から、三日目

【麗華】「いい加減に、泣き止んで……、ねっ? お姉ちゃんまで、泣きたくなっちゃうから……」

【ゆう】「まどかは、僕の人生だったんだァァ…っ!! わああぁぁ―――――…っ!!

 まどかぁぁぁぁ…っ! まどかぁぁぁぁぁぁぁ…っ!!」

【麗華】「死んだ者を、生き返らせることは出来ないの。ゆうちゃんこそ……現実を受け入れ

なくちゃ、生きていけないのよ?」

【麗華】「クヨクヨしている時間は、自分の人生を無駄にしていることと同じ。そろそろカラ元気

を出して、天国のまどかを安心させてあげなさい」

【麗華】「心にまどかを宿しながら、元気になることこそ。まどかへの、供養になるんだからね」

【ゆう】「分かってるよォォ――――…っ!!」

【麗華】「………」

【ゆう】「わあぁぁぁぁ…っ! わああぁぁぁぁぁぁ…っ!!」

【麗華】「ゆうちゃん。お姉ちゃんね、思ったんだけど……。泣きながらでもいいから、聞いて?」

【ゆう】「わぁぁぁぁんんっ! わぁぁぁぁぁんんっ!! まどかぁぁ―――…っ!!」

【麗華】「ゆうちゃんが元気になってくれる為に。ちょっと、希望的なことを言うわね。

あくまで『出来るんじゃないかしら』っていう、思いつきよ?」

【ゆう】「グスッ! ヒック!」

【麗華】「現存する魅神楽一族の中で……。お姉ちゃんとゆうちゃんだけが、特殊な能力を

持て余しているわよね。ゆうちゃんの場合は、デジャヴ能力を」

【ゆう】「わあぁぁぁぁ…っ! うわあぁぁぁぁぁぁんんっ!!」

【麗華】「輪廻で巡ってくる来世へ向けて……。同じ不幸を繰り返さないよう、デジャヴで

伝えることは……可能かも知れないわ」

【ゆう】「まどかぁぁ……、えっ?」

【麗華】「ゆうちゃんの能力は、まさにその為のモノだと思う。ゆうちゃんの『優しい心』なら、

来世の自分へ危機を知らせることも、可能なんじゃないかしら

【麗華】「現世で、まどかを生き返らせることは、無理だけど。二度と、まどかを死なすことの無い

デジャヴを、自分の来世へ伝えるのよ」

【ゆう】「そ、その話……詳しく、教えて」

【麗華】「フフ、泣き止んだわね。じゃあ私の思いつきを、詳しく教えてあげるけど。

その代わりに……」

【ゆう】「その代わりに……?」

【麗華】「今から、顔とお手々を洗い……。お姉ちゃんと一緒に、夕飯を食べること。いいわね?」